採用しても辞める。その悪循環が止まらない本当の理由
採用しても半年で辞める。また求人を出す。また辞める。この悪循環の出口が見えない人事部長は少なくない。しかし、離職率が高止まりする企業には共通する構造的な原因がある。データが示す5つの打ち手と、最も見落とされがちな「ある施策」の効果を数字で示す。
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「離職率が高い」——この課題に頭を抱えている人事担当者や経営者は少なくありません。
厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によると、一般労働者の離職率は12.1%。新卒3年以内の離職率にいたっては約3割に達しています。特に従業員100〜299人規模の企業では離職率が高止まりしており、採用しても定着しない悪循環に陥っているケースが目立ちます。
離職は単なる「人が減る」問題ではありません。採用・教育コスト、残った社員への負担増、組織ナレッジの流出。1人の離職が企業にもたらす損失は、年収の50〜200%に相当するとも言われています。
では、離職率を下げるために本当に効果的な方法とは何か。データと根拠に基づいた5つの施策を解説します。
施策①:エンゲージメントサーベイの定期実施と即時対応
離職率を下げる第一歩は、組織の状態を「可視化」することです。
米Gallup社の調査では、エンゲージメントが高い組織は離職率が43%低いという結果が出ています。しかし、年に1回のアンケートだけでは、変化に気づくのが遅すぎます。
効果を出すポイント:
- 月1回以上のパルスサーベイを実施する。設問は5問程度、回答時間1分以内に抑えることで回答率を維持できます
- スコアの「変化」を見る。絶対値よりも、先月比で下がったチームに注目する
- 結果を現場にフィードバックする。「聞きっぱなし」は逆効果。2週間以内に何らかのアクションを取ることが信頼維持に不可欠です
エンゲージメントサーベイは「測る」ことが目的ではなく、「対話のきっかけを作る」ことが目的です。数値が下がったチームには、まず上司が「何かあった?」と声をかける。その一言が、離職を防ぐ第一歩になります。
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施策②:1on1面談の質を根本から見直す
「1on1はやっているけど、離職率は変わらない」。そんな声をよく聞きます。
問題は、1on1が「業務報告の場」になっていることです。リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、1on1を「意味がない」と感じている部下は約4割。形骸化した1on1は、むしろ逆効果を生みます。
離職率を下げる1on1のポイント:
- 業務の話は3割以下に。残りは本人の状態、キャリア、悩みにフォーカスする
- 相手の思考特性を理解する。論理的に話したい人と、感情を聴いてほしい人では、効果的なアプローチが異なります
- 「最近どう?」ではなく、具体的に問いかける。「先週の案件で大変だったこと、ある?」「半年後、どんな仕事をしていたい?」
1on1の質が上がると、上司は部下の小さな変化に気づけるようになります。「最近、発言が減ったな」「表情が暗いな」——こうした予兆を早期にキャッチできれば、離職を未然に防ぐことが可能です。
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施策③:キャリアパスの可視化と成長機会の提供
パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査」によると、離職意向がある人の約6割が「成長実感がない」と回答しています。
特に20〜30代の若手にとって、「この会社にいて自分は成長できるのか」は最重要テーマです。将来の見通しが立たない会社に、優秀な人材は留まりません。
具体的な施策:
- スキルマップを作成し、四半期ごとに振り返る。「半年前の自分と比べて何ができるようになったか」を可視化する
- 社内公募制度やジョブローテーションを導入する。同じ部署で同じ業務の繰り返しは、成長意欲の高い人ほど苦痛に感じます
- 上司がキャリアについて語る時間を確保する。「3年後、どうなりたい?」という問いかけを、1on1の定番アジェンダに組み込む
重要なのは、「成長できる環境がある」と社員が実感できること。制度だけ整えても、活用されなければ意味がありません。上司が率先して「挑戦していいよ」と背中を押す文化が求められます。
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施策④:心理的安全性の高いチームづくり
Googleが社内調査「Project Aristotle」で明らかにしたように、チームの生産性に最も影響する因子は「心理的安全性」です。そして心理的安全性は、離職率にも直結します。
心理的安全性が低い職場では、社員は本音を言えません。不満を溜め込み、ある日突然「辞めます」と切り出す。いわゆる「サイレント退職」の温床です。
心理的安全性を高めるアプローチ:
- 失敗を責めない文化を醸成する。「なぜ失敗したか」ではなく「次にどうするか」にフォーカスする
- 上司から自己開示する。「実は自分も若手の頃、同じ失敗をした」。こうした発言が、部下の心理的ハードルを下げます
- 「相談しやすい仕組み」を作る。上司に直接言えないことでも、第三者を介せば伝えられることがあります。社内相談窓口やメンター制度の整備が有効です
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厚生労働省の「職場のメンタルヘルス対策に関する調査」では、相談しやすい環境がある職場は離職率が有意に低いことが示されています。「何でも言える空気」を作ることが、結果的に離職率を下げる方法として効果を発揮します。
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施策⑤:離職の予兆を早期に察知する仕組み
離職を防ぐうえで最も重要なのは、「辞めます」と言われる前に気づくことです。
エン・ジャパンの調査によると、退職を決意してから実際に退職届を出すまでの期間は平均2〜3か月。この間に何らかの「予兆」が必ず現れます。
よくある離職の予兆:
- 会議での発言頻度が減った
- 残業が急に減った(or 急に増えた)
- チームの飲み会やイベントに参加しなくなった
- 有給休暇の取り方が変わった(平日に単発で取得するようになった)
- 将来のキャリアについて話さなくなった
問題は、これらの変化を誰が、どうやって察知するかです。
管理職の勘や経験だけに頼るのには限界があります。特に組織が大きくなると、一人ひとりの変化を把握することは物理的に困難です。
近年では、対話データの分析や行動パターンの変化を検知する仕組みを導入する企業が増えています。日常のコミュニケーションの中から、人が見逃しがちな微細な変化を捉え、早期にアラートを出す。「察知」を仕組み化することで、問題が小さいうちに対処できるようになります。
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まとめ:離職率を下げる方法は「仕組み」と「対話」の両輪
離職率を下げるための5つの施策を振り返ります。
- エンゲージメントサーベイの定期実施と即時対応——組織の状態を可視化し、変化に素早く反応する
- 1on1面談の質を根本から見直す——業務報告ではなく、本人の状態に寄り添う対話の場にする
- キャリアパスの可視化と成長機会の提供——「この会社で成長できる」という実感を持たせる
- 心理的安全性の高いチームづくり——本音を言える環境が、サイレント退職を防ぐ
- 離職の予兆を早期に察知する仕組み——問題が大きくなる前に、気づいて対処する
これらに共通するのは、「仕組み」と「対話」の両輪で取り組むという視点です。制度だけ整えても対話がなければ機能しません。対話の意思があっても仕組みがなければ継続しません。
離職率の改善は、一朝一夕にはいきません。しかし、正しい施策を地道に積み重ねることで、確実に数字は変わっていきます。
まずは、あなたの組織で今日からできることを1つ。始めてみませんか。
よくある質問
Q. 離職率が高い企業に共通する特徴はありますか?
A. 社員の声を拾う仕組みがない、1on1が形骸化している、キャリアパスが見えない、心理的安全性が低いといった特徴が共通して見られます。これらは制度と対話の両面から改善が可能で、一つずつ取り組むことで確実に数字は変わります。
Q. 離職の予兆にはどんなものがありますか?
A. 会議での発言頻度の減少、残業の急な増減、チームイベントへの不参加、有給の取り方の変化、将来のキャリアについて話さなくなるなどが代表的なサインです。これらの変化を早期にキャッチし、声をかけることが離職防止の第一歩です。
Q. エンゲージメントサーベイはどのくらいの頻度で実施すべきですか?
A. 月1回以上のパルスサーベイが効果的です。設問は5問程度、回答時間1分以内に抑えることで回答率を維持できます。絶対値よりも先月比の変化に注目し、スコアが下がったチームにはすぐにフォローを行いましょう。
Q. 1on1をやっているのに離職率が改善しない場合、何が問題ですか?
A. 1on1が業務報告の場にとどまっている可能性が高いです。業務の話は3割以下にとどめ、部下の状態やキャリアの悩みに寄り添う対話にシフトしましょう。相手の思考特性を理解して問いかけ方を工夫することで、面談の質が根本から変わります。
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