「来月からリーダーを」と言われた夜、プレイヤー時代の成功体験が邪魔になると知った
「来月からリーダーを」と言われた夜、嬉しさより不安が勝った。プレイヤーとして結果を出してきた自分が、なぜチームを動かせないのか。最初の90日間で信頼を壊す人と土台を築く人の差は、たった一つの行動原則にあった。その原則を知らないまま走り出すと、取り返しがつかなくなる。
特集シリーズ

「来月からチームリーダーをお願いしたい」
Phase 1(1-30日):観察と信頼構築
最初の30日間で最も大切なのは、「何もしないこと」です。
意外に思われるかもしれません。新しい役職に就いた焦りから、すぐに成果を出そうとする気持ちはよくわかります。しかし、チームの現状を理解せずに動き始めると、取り返しのつかない信頼の毀損につながります。
やるべきこと1:全メンバーと1on1を実施する
着任後2週間以内に、チームの全メンバーと30分ずつの1on1を設定しましょう。このとき重要なのは、業務報告を求めるのではなく、相手の話を「聴く」ことに徹することです。
聞くべきこと:
- 今の業務で楽しいこと、つらいこと
- チームの良いところ、改善してほしいところ
- 前任のマネージャーに対して感じていたこと
- キャリアの方向性や、やってみたいこと
メモを取りつつ、相手の言葉をそのまま受け止めてください。この段階で「それは違うと思う」「こうしたほうがいい」とアドバイスするのは禁物です。
やるべきこと2:チームの「暗黙のルール」を把握する
どのチームにも、マニュアルには書かれていない暗黙のルールがあります。会議での発言の順番、Slackでの絵文字の使い方、誰に聞けば何がわかるか。こうした「見えないルール」を理解することが、チームに溶け込む第一歩です。
観察のポイントは3つ。誰と誰がよく話しているか。会議で誰が最初に発言し、誰が黙っているか。困ったとき、メンバーは誰に相談しているか。これらを観察するだけで、チームの力学が見えてきます。
やるべきこと3:「変えないこと」を宣言する
新任マネージャーに対して、メンバーが最も不安に感じるのは「今までのやり方が全部変わるのではないか」ということです。
最初のチームミーティングで、「当面は今のやり方を尊重します。変更が必要な場合は、必ず事前に相談します」と伝えましょう。この一言が、チームの心理的安全性を守ります。
やるべきこと4:自分の「取扱説明書」を共有する
自分がどういう人間なのかをオープンにしましょう。得意なこと、苦手なこと、大切にしている価値観、コミュニケーションの好み。「私はこういう人間です」と先に開示することで、メンバーも心を開きやすくなります。
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Phase 2(31-60日):仕組みづくり
信頼関係の土台ができたら、チームが持続的に成果を出すための「仕組み」を整えるフェーズに入ります。
やるべきこと1:1on1を定例化する
Phase 1で実施した1on1を、定期的なリズムに乗せましょう。週1回または隔週で、1人あたり30分。カレンダーにブロックし、よほどのことがない限り動かさない。「1on1をキャンセルしない」ということ自体が、メンバーへのメッセージになります。
1on1の内容は、業務の進捗確認に偏らないように注意が必要です。キャリアの話、チームへのフィードバック、困っていることなど、テーマを意識的に分散させてください。
やるべきこと2:情報の流れを設計する
マネージャーの重要な役割の一つが、情報のハブになることです。経営層からの方針をチームに翻訳して伝え、現場の声を経営層にフィードバックする。この「橋渡し」がうまくいかないと、チームは方向性を見失います。
具体的には、週次のチームミーティングで「今、会社全体で何が起きているか」を5分で共有する時間を設けましょう。メンバーは自分たちの仕事が会社全体のどこに位置づけられているかを知ることで、モチベーションが高まります。
やるべきこと3:意思決定の基準を明確にする
「このケースはマネージャーに相談が必要」「このケースは自分で判断してOK」——この線引きが曖昧だと、メンバーは毎回確認を求めるようになり、マネージャーはボトルネックになります。
判断基準の例を示しましょう。
- メンバーが自分で判断してよいこと:タスクの優先順位変更(納期に影響しない範囲)、社内ミーティングの日程調整
- マネージャーに相談すべきこと:納期の変更、他チームへの依頼、新しいツールの導入
- 一緒に判断すること:メンバーのアサイン変更、チーム目標の見直し
こうした基準をドキュメント化して共有することで、チームの自律性が高まります。
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Phase 3(61-90日):成果を出す
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最後の30日間は、Phase 1と2で築いた土台の上に、目に見える成果を積み上げるフェーズです。
やるべきこと1:小さな成功体験をチームで共有する
90日間で大きな成果を出す必要はありません。それよりも、小さな改善や成功をチーム全体で認識し、祝うことが重要です。
「先週リリースした機能、お客様から好評でした」「Aさんが提案した業務フローの改善で、作業時間が20%短縮しました」——こうした小さな成功を拾い上げ、チームに共有する。これがマネージャーの仕事です。
やるべきこと2:チームの目標と個人の目標を接続する
この時期になると、チームが向かうべき方向性が見えてきているはずです。チームの目標と、メンバー一人ひとりのキャリア目標がどうつながるかを、1on1で丁寧にすり合わせましょう。
「チームとしてはこの方向に進みたい。あなたが挑戦したいと言っていた○○は、この目標のこの部分で活かせると思う」——このような対話が、メンバーの主体性を引き出します。
やるべきこと3:自分自身の振り返りを行う
90日間を振り返り、自分自身のマネジメントを評価しましょう。Phase 1でメンバーから聞いた課題は、どの程度解決に向かっているか。1on1の質は上がっているか。チームの雰囲気は良くなっているか。
完璧である必要はありません。「まだできていないこと」を認識し、次の90日間の計画を立てること。この振り返りの習慣が、マネージャーとしての成長を加速させます。
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新任マネージャーがやりがちな3つの失敗
最後に、初めてマネージャーになった人が陥りやすい失敗を3つ紹介します。先に知っておくことで、同じ轍を踏まずに済むかもしれません。
失敗1:自分が一番優秀なプレイヤーであろうとする
マネージャーになっても、つい自分で手を動かしてしまう。部下の仕事が気になって、細かく指示を出してしまう。最悪の場合、部下のタスクを巻き取ってしまう。
気持ちはわかります。自分でやったほうが早いし、品質も担保できる。でも、それを続けるとメンバーは成長の機会を失い、マネージャーは本来の仕事——チーム全体の成果を最大化すること——に時間を割けなくなります。
「自分の手を動かす時間を、メンバーの成長に投資する時間に変える」。この意識の転換が、初めてのマネジメントで最も難しく、最も重要なポイントです。
失敗2:全員に同じ接し方をする
メンバーにはそれぞれ異なる思考特性やコミュニケーションスタイルがあります。論理的な説明を求める人もいれば、まず共感してほしい人もいる。細かい指示がほしい人もいれば、大枠だけ示して任せてほしい人もいる。
「公平」と「平等」は違います。全員に同じ接し方をすることが公平なのではなく、一人ひとりに合った接し方をすることが本当の公平さです。Phase 1の1on1で得た情報を活かし、メンバーごとにコミュニケーションの取り方を調整しましょう。
失敗3:「嫌われたくない」が判断基準になる
新任マネージャーにとって、メンバーとの関係は最大の関心事です。「嫌われたくない」という気持ちから、必要なフィードバックを避けたり、問題を先送りにしたりするケースは少なくありません。
しかし、耳の痛いことを伝えるのもマネージャーの仕事です。大切なのは、「何を言うか」と同時に「どう言うか」。相手の思考特性を理解し、受け入れやすい伝え方を選ぶことで、信頼関係を損なわずにフィードバックを届けることができます。
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まとめ:最初の90日は「土台づくり」の期間
初めてマネージャーになった最初の90日間は、目覚ましい成果を出す期間ではありません。これからチームとして成果を出し続けるための「土台づくり」の期間です。
3つのフェーズを振り返ります:
- Phase 1(1-30日):観察と信頼構築。まずは聴くことに徹する
- Phase 2(31-60日):仕組みづくり。チームが自律的に動ける環境を整える
- Phase 3(61-90日):成果を出す。小さな成功を積み重ね、次の90日間につなげる
焦らなくて大丈夫です。完璧なマネージャーは存在しません。メンバーの声に耳を傾け、一つずつ改善を重ねていけば、あなたらしいマネジメントスタイルが必ず見つかります。
そして、困ったときは一人で抱え込まないでください。同僚のマネージャーに相談する、上司に助けを求める、あるいは専門的なサポートを活用する。マネージャーが健全であることが、チーム全体の健全さの土台になります。
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