退職理由の本音ランキング|建前に隠れた本当の理由
退職理由の建前と本音のランキングを比較し、そのギャップが生まれる構造的原因を解説。社員の本音を引き出す仕組みづくりまで、人事・経営者が取るべき具体策を紹介します。

「家庭の事情で……」「新しい挑戦がしたくて……」
退職面談でこうした言葉を聞いたとき、あなたは額面どおりに受け取っていませんか。退職者の多くは、最後まで「本当の理由」を口にしません。人事担当の田中さんが丁寧に話を聞いても、現場マネージャーの木村さんが引き止めの面談をしても、返ってくるのはどこか歯切れの悪い「建前」ばかり。
しかし、建前の裏にこそ組織の本質的な課題が潜んでいます。そこに目を向けなければ、同じパターンの離職が繰り返されるだけです。
この記事では、退職時に語られる「建前の理由」と「本音の理由」のランキングを比較し、なぜギャップが生まれるのか、そして本音を聞き出すために何ができるのかを具体的に解説します。
退職面談で聞く「建前」の退職理由ランキング
まず、退職時に社員がよく口にする「建前」の理由を見てみましょう。エン・ジャパンが実施した退職理由に関する調査では、退職時に本当の理由を会社に伝えた人は約47%にとどまるとされています。つまり、半数以上が建前で去っていくのです。
退職面談で語られやすい「建前」の退職理由は、一般的に以下のような傾向があります。
建前ランキング
第1位:キャリアアップ・新しい挑戦
「自分の成長のために新しい環境に挑戦したい」。もっとも無難で、前向きに聞こえるため、多くの社員が使いやすい理由です。会社への批判にもならず、引き止めにくい「最強の建前」と言えます。
第2位:家庭の事情・ライフイベント
「結婚を機に」「親の介護で」「配偶者の転勤で」など。プライベートな事情は詳しく聞きにくいため、それ以上追及されにくい理由として選ばれがちです。
第3位:体調・健康上の理由
「体調を崩してしまい……」という理由も、会社側が深く踏み込みにくいため、便利な建前として使われることがあります。もちろん本当に体調を崩しているケースもありますが、その背景に職場のストレスが隠れていることも少なくありません。
第4位:仕事内容への不満
「やりたい仕事と違った」「自分のスキルを活かせない」。一見本音のように聞こえますが、これも表面的な理由にとどまることが多い項目です。なぜやりがいを感じなくなったのか、その根本にある人間関係や評価の問題は語られないままです。
第5位:勤務条件・通勤の問題
「通勤が遠くて」「残業が多くて」など。物理的な条件は客観的でわかりやすいため、本音を隠すための盾として機能しやすい理由です。
本音の退職理由ランキング
では、建前の裏にある「本音」はどうでしょうか。リクルートやエン・ジャパンなど複数の人材サービス企業の調査を総合すると、本音の退職理由として繰り返し上位に挙がるテーマには明確な傾向が見えてきます。
本音ランキング
第1位:上司・マネジメントへの不満
本音の退職理由として、ほぼすべての調査で最上位に挙がるのがこの項目です。「上司が部下の話を聞かない」「感情的に怒鳴る」「えこひいきがある」「指示が曖昧で責任だけ押しつけられる」。こうした日常的なマネジメントの問題が、じわじわと社員の心を離していきます。
厚生労働省の「労働安全衛生調査」でも、仕事の強いストレスの原因として「上司との関係」は常に上位にランクインしています。部下にとって上司は「会社そのもの」に等しく、上司への不満はそのまま会社への不信感に直結するのです。
第2位:評価・報酬への不満
「頑張っても正当に評価されない」「同期より成果を出しているのに給与が変わらない」。こうした不満は、金額の大小よりも「納得感」の問題として現れます。
評価基準が不透明だったり、上司の主観に偏っていたりすると、社員は「何をしても同じ」という無力感を抱きます。特に中小企業では評価制度そのものが未整備であることも多く、「頑張り損」と感じた社員が静かに転職活動を始めるパターンが見られます。
第3位:成長実感・キャリアへの不安
「この会社にいても成長できない」「3年後の自分が想像できない」。スキルアップの機会が乏しい、研修制度がない、挑戦的な仕事が回ってこない。特に入社3年目前後の若手社員に多い本音です。
成長実感の欠如は、日々の業務がルーティン化したときに顕著になります。「自分はここで何をしているのだろう」という焦燥感が募り、外の世界に目が向き始めます。
第4位:職場の人間関係・チームの雰囲気
上司に限らず、同僚やチーム全体の雰囲気も大きな要因です。「派閥がある」「陰口が多い」「協力し合う文化がない」「孤立している」。特に中小企業では少人数のチームで働くことが多いため、一人との関係がこじれるだけで逃げ場がなくなります。
心理的安全性(安心して意見を言える環境)が低いチームでは、社員は本音を出さず、不満を溜め込み、ある日突然退職届を出す——という流れが起きやすくなります。
第5位:会社の将来性・経営方針への疑問
「この会社は大丈夫なのか」「経営者のビジョンが見えない」。経営層と現場の間に情報格差があると、社員は将来に不安を感じます。特に業績が不透明な時期や、経営方針が頻繁に変わる場合に、この理由は強く表面化します。
建前と本音のギャップが生まれる構造的な原因
なぜ、社員は本当の退職理由を言えないのでしょうか。個人の性格の問題ではなく、そこには構造的な原因があります。
1. 「円満退職」へのプレッシャー
日本の職場文化では、退職時に波風を立てないことが暗黙の了解とされています。「立つ鳥跡を濁さず」の精神が根強く、本音を言って関係がこじれるリスクを取るよりも、当たり障りのない理由を伝えたほうが安全だと判断するのは自然なことです。
2. 退職面談の構造的な問題
多くの場合、退職面談は直属の上司や人事担当者が行います。しかし、退職理由がまさにその上司への不満であった場合、本人の目の前で本音を語れるはずがありません。面談する側と問題の当事者が同一人物——この構造的な矛盾が、本音の把握を困難にしています。
3. 「言っても変わらない」という諦め
過去に不満を伝えたが改善されなかった経験があると、「もう何を言っても無駄だ」という学習性無力感が生まれます。こうした社員にとって、退職面談で本音を語ることにはメリットがなく、むしろリスクでしかありません。退職を決めた時点で、社員の中ではすでに「この会社とのコミュニケーション」は終わっているのです。
4. 転職先への影響を懸念している
退職時にネガティブな本音を語ると、退職後のリファレンスチェック(前職への問い合わせ)で不利になるのではないかという懸念も、本音を抑える要因になります。特に同じ業界内で転職する場合、元上司との関係を壊したくないという心理が働きます。
本音を聞き出すための仕組みづくり
建前と本音のギャップを埋めるためには、「個人の努力」ではなく「組織の仕組み」で対処する必要があります。
第三者によるイグジットインタビュー(退職者面談)
退職面談を直属の上司ではなく、人事部門や外部の第三者が実施する方法です。面談の冒頭で「この場はあなたを評価する場ではなく、組織改善のためのフィードバックをいただく場です」と明確に伝えましょう。
効果的な質問例を挙げます。
- 「入社時の期待と、実際の職場環境にギャップはありましたか?」
- 「上司やチームとの関係で、困ったことや改善してほしかったことはありますか?」
- 「もし1つだけこの会社を変えられるとしたら、何を変えますか?」
- 「後任の方のために、伝えておきたいことはありますか?」
直接聞きにくい場合は「この会社で最もストレスを感じた場面はいつでしたか?」と、過去の具体的な場面に焦点を当てると、本音が引き出しやすくなります。
匿名サーベイ・パルスサーベイの活用
退職が決まる前に本音を拾うためには、在職中の匿名アンケートが有効です。パルスサーベイ(短い質問を定期的に実施するアンケート)であれば、社員の負担も少なく、継続的に状態を把握できます。
ポイントは「本当に匿名であること」を社員が信じられるかどうかです。少人数のチームでは、回答内容から個人が特定されるのではないかという不安がサーベイの回答率と正直さを下げます。外部ツールの利用や、一定人数以上でのみ結果を表示するといった工夫が必要です。
退職者データの蓄積と傾向分析
個々の退職理由を「点」で見るのではなく、データとして蓄積し「面」で捉えることが重要です。
- 「営業部では人間関係の問題が3年連続で最多理由」
- 「入社2年目で評価への不満を理由に辞めるパターンが繰り返されている」
- 「特定のマネージャーの下から離職者が集中している」
こうした傾向が見えてくれば、組織として的を絞った対策を打てるようになります。半年に1回は退職データの傾向分析を実施し、経営層にも共有しましょう。
日常的に本音が言える環境づくり
退職面談やサーベイだけでなく、日常的に「言いにくいこと」を言える環境を整えることが根本的な解決策です。
1on1ミーティングでは、業務進捗の確認だけでなく「最近、モヤモヤしていることはある?」「チームで改善したいことは?」と状態を聴く時間を設けましょう。
マネージャーの傾聴力やコミュニケーションスタイルの質が、チーム全体の心理的安全性を大きく左右します。思考特性を活用したコミュニケーション改善に取り組むことで、「この上司になら話してもいい」と思える関係性を構築しやすくなります。
まとめ
- 退職時に本当の理由を伝える社員は約半数。残りの半数は建前で去っていく
- 建前の上位は「キャリアアップ」「家庭の事情」「体調」など、追及しにくい理由が並ぶ
- 本音の上位は「上司への不満」「評価の納得感の欠如」「成長実感のなさ」——いずれも組織が改善可能な要因
- 本音が語られないのは、円満退職へのプレッシャーや退職面談の構造的矛盾が原因
- 第三者面談、匿名サーベイ、退職データ分析など「仕組み」で本音を拾う体制が不可欠
- 退職者の本音の中に、組織の未来を変えるヒントがある
「うちの退職者はみんな円満に辞めていく」——もしそう感じているなら、それは本音が届いていないサインかもしれません。まずは自社の退職理由データを振り返ることから始めてみてください。
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