2026年2月21日by O2CONNECTIVE編集部12分で読めます

社員の「やる気スイッチ」が入る面談術|5つの質問テクニック

面談で社員のやる気を引き出す5つの質問テクニックを解説。明日からの1on1で使える具体的な問いかけ例と、避けるべきNGパターン3つもあわせて紹介します。

社員の「やる気スイッチ」が入る面談術|5つの質問テクニック

「面談しても、部下の目が輝かない」

定期的に1on1を実施している。面談シートも用意している。それなのに、部下のモチベーションが上がっている実感がない。むしろ、面談後に部下の表情がさらに曇っているように見えることすらある。

こうした経験を持つマネージャーは、想像以上に多いのではないでしょうか。

リクルートマネジメントソリューションズの調査では、1on1を「あまり意味がない」と感じている部下は約4割。つまり、面談の場は設けられていても、それが部下のやる気につながっていないケースが半数近くに上るのです。

しかし、面談のやり方を変えるだけで、部下の反応は劇的に変わります。カギを握るのは「質問の仕方」です。何を聞くか、どう聞くか。たった一つの問いかけが、部下の内側にある「やる気スイッチ」を押すことがあります。

本記事では、面談で部下のやる気を引き出す5つの質問テクニックと、避けるべきNGな面談パターンを解説します。

なぜ面談で部下のやる気が変わるのか

面談でやる気が引き出せるメカニズムを理解するために、まず「やる気」の構造を整理しましょう。

心理学の自己決定理論によると、人の内発的動機づけは「自律性」「有能感」「関係性」の3つの欲求が満たされたときに高まるとされています。

  • 自律性:自分で選択し、決定できている感覚
  • 有能感:自分にはできる、成長しているという実感
  • 関係性:周囲から受け入れられ、つながっている安心感

優れた面談は、この3つの欲求すべてに働きかけます。

「あなたはどうしたい?」と問いかけることで自律性を刺激する。「前よりここが成長したね」と伝えることで有能感を満たす。「あなたのことを理解したい」という姿勢を示すことで関係性を深める。

逆に、やる気を奪う面談は、これらの欲求を否定します。「こうしなさい」と指示することで自律性を奪い、「まだまだだな」と評価することで有能感を潰し、「あなたの気持ちはさておき」と切り捨てることで関係性を断つ。

面談は、使い方次第で「やる気の起爆剤」にも「やる気の消火器」にもなるのです。

テクニック①:「最近、一番やりがいを感じた瞬間は?」——ポジティブフォーカスの質問

多くの面談は「問題」から始まります。「困っていることはない?」「課題は何?」。もちろんこれらも大切ですが、問題に焦点を当て続けると、面談自体がネガティブな体験になってしまいます。

代わりに、最初の質問はポジティブな体験に焦点を当てましょう。

質問例:

  • 「最近の仕事で、一番やりがいを感じた瞬間ってある?」
  • 「ここ1か月で、"これはうまくいったな"と思えたことは何?」
  • 「今の仕事で、楽しいと感じる部分って何だろう?」

なぜこの質問が効くのか

人間の脳には「プライミング効果」があります。ポジティブな記憶を想起すると、その後の思考もポジティブな方向に傾きやすくなります。面談の冒頭でポジティブな体験を思い出してもらうことで、その後の対話全体のトーンが前向きになるのです。

さらに、この質問は部下の「強み」や「価値観」を可視化する効果もあります。何にやりがいを感じるかは人それぞれ。その答えから、部下が本質的に大切にしていることが見えてきます。

注意点: 「最近やりがいを感じたことなんてない」と返ってきた場合、それ自体が重要なサインです。無理にポジティブな答えを引き出そうとせず、「そうか、最近大変だったんだね。何が一番しんどい?」と、受容的に切り替えましょう。

テクニック②:「もし制約がなかったら、どうしたい?」——制約解除の質問

部下がやる気を失っている原因の一つに、「どうせ無理だ」という制約の思い込みがあります。予算がない、人が足りない、上が許可しない。こうした制約に囲まれると、人は考えること自体を止めてしまいます。

この思考の壁を壊すのが、「制約解除の質問」です。

質問例:

  • 「もし予算も人員も自由に使えるとしたら、何をやりたい?」
  • 「仮にルールを一つだけ変えられるとしたら、何を変える?」
  • 「理想の働き方ができるとしたら、どんな1日を過ごしたい?」

なぜこの質問が効くのか

制約を外すと、人は「本当にやりたいこと」を語り始めます。そこに、部下の内発的動機の源泉があります。

もちろん、すべてを実現することはできません。しかし、「本当にやりたいこと」が明確になれば、「現実の制約の中で、その方向に少しでも近づくにはどうすればいいか?」という建設的な対話に発展させることができます。

部下が「こんなことやりたいんですけど、無理ですよね……」と笑いながら話したとき、「面白いね。全部は無理かもしれないけど、最初の一歩として何ができるか一緒に考えよう」と返す。この一言が、部下のやる気スイッチを押すきっかけになります。

テクニック③:「何が引っかかっている?」——感情の言語化を促す質問

モチベーションの低下は、多くの場合、言語化されていない感情の蓄積から起きています。モヤモヤしているけれど、それが何なのかは自分でもよくわからない。この「言語化されていない不満」が、静かにやる気を蝕んでいきます。

面談では、この言語化をサポートすることが重要です。

質問例:

  • 「最近、何か引っかかっていることってある?大きなことじゃなくても」
  • 「仕事をしていて、"なんか違うな"と感じる瞬間ってない?」
  • 「モヤモヤしていること、何でもいいから話してみてくれない?」

なぜこの質問が効くのか

心理学では、感情を言葉にすること自体に治療的効果があるとされています。これを「感情ラベリング」と呼びます。モヤモヤを言葉にするだけで、脳の扁桃体(不安や恐怖を処理する部位)の活動が低下し、ストレスが軽減されるのです。

面談で部下が自分の感情を言語化できた瞬間、「ああ、そういうことだったのか」とスッキリした表情になることがあります。この瞬間が、やる気の回復ポイントです。

大切なのは「解決しようとしない」こと。 部下が「上司の○○さんとうまくいっていなくて……」と話し始めたとき、すぐに「じゃあ○○さんにこう言ってみたら?」とアドバイスするのはNG。まずは「そうだったんだね。それは大変だったね」と受け止める。解決策は、部下自身が見つけるのが理想です。

テクニック④:「あなたの強みは○○だと思うけど、自分ではどう思う?」——強みの承認と自己認識を促す質問

人は、自分の強みを自覚していないことが多いものです。「え、それって強みなんですか? 普通にやっているだけですけど」——この反応こそが、強みが無自覚であることの証拠です。

面談では、上司が気づいている部下の強みを伝え、本人の自己認識との擦り合わせを行いましょう。

質問例:

  • 「あなたの強みは○○だと思っているんだけど、自分ではどう感じてる?」
  • 「チームの中で、あなたにしかできないことって何だと思う?」
  • 「周りの人から"助かった"って言われるのは、どんな場面?」

なぜこの質問が効くのか

この質問は、単なる褒め言葉よりも深い効果があります。なぜなら、上司からの承認と、自分自身の内省を同時に促すからです。

「あなたは○○が得意だね」と言い切るだけだと、部下は「そうですかね」で終わってしまうことがあります。しかし「自分ではどう思う?」と問いかけることで、部下は自分の中で強みを再定義し始めます。

この内省のプロセスが、有能感——「自分にはこういう価値がある」——を高め、やる気の土台を強化します。

さらに、強みを把握することで、今後の仕事の任せ方にも活かせます。強みを活かせる業務にアサインすることは、モチベーション向上の最も直接的な方法です。

テクニック⑤:「半年後、どうなっていたい?」——未来志向の質問

やる気が低下している人の思考は、過去と現在に向きがちです。「あのとき、ああしておけばよかった」「今、こんなに大変だ」。この過去・現在への囚われを、未来に向け直すのが最後のテクニックです。

質問例:

  • 「半年後、どんなスキルを身につけていたい?」
  • 「1年後の自分をイメージするとしたら、どんな状態が理想?」
  • 「来月の今頃、"あれやってよかったな"と思えそうなことって何?」

なぜこの質問が効くのか

未来志向の質問は、「目標設定理論」に基づいています。明確な目標がある人は、そうでない人に比べてパフォーマンスが向上することが数多くの研究で確認されています。

ただし、ここでの目標は会社の目標ではなく、部下自身の目標です。「会社として達成してほしい数値」ではなく、「あなた自身がどうなりたいか」。この視点の切り替えが、自律性の欲求を満たし、やる気を内側から引き出します。

部下が「半年後には、新規案件のプレゼンを一人でできるようになりたいです」と語ったら、「いいね。そのために必要なサポート、何か思いつく?」と返す。未来のビジョンが明確になり、そこに向かうステップが見えたとき、人は自然と動き始めます。

やってはいけない!NGな面談パターン3つ

質問テクニックと同じくらい重要なのは、「やってはいけないこと」を知ることです。以下の3つのパターンは、部下のやる気を確実に下げてしまいます。

NG①:「尋問型面談」——矢継ぎ早に質問を浴びせる

「最近どう?」「何か困ってる?」「あの案件は進んでる?」「チームの雰囲気はどう?」

矢継ぎ早に質問を投げかけると、面談ではなく「尋問」になります。部下は答えることに精一杯で、自分の考えを深める余裕がなくなります。

改善ポイント: 一つの質問をしたら、沈黙を恐れず待つ。10秒の沈黙が気まずく感じても、部下はその間に思考を整理しています。沈黙は敵ではなく、最も強力な質問ツールです。

NG②:「自分語り面談」——上司が8割話す

「俺が若い頃は……」「自分の経験から言うと……」「この前、○○部長に言ったんだけど……」

部下の時間であるはずの面談が、上司の自分語りの場になっている。これは非常に多いパターンです。部下が「はい、そうですね」と相槌を打ちながら、心の中では「早く終わらないかな」と思っている。

改善ポイント: 面談中の発話比率を意識する。理想は「部下7:上司3」。自分が話し始めたら「これは部下にとって必要な情報か?」と自問する。必要でなければ、質問に切り替える。

NG③:「評価通告面談」——ダメ出しに終始する

「この前の報告書、ここがダメだった」「営業成績が目標に届いていない」「もっと積極的にならないと」

面談が「改善点の指摘」に終始してしまうパターンです。上司としては部下の成長を願ってのことですが、部下にとっては「ダメ出しの場」でしかありません。

改善ポイント: フィードバックを伝える場合は、「SBI(Situation-Behavior-Impact)」フレームワークを使う。「先日のプレゼン(状況)で、データの根拠を丁寧に説明していた(行動)。おかげでクライアントの納得感が高まった(影響)」のように、具体的な状況と行動と影響をセットで伝える。ポジティブなフィードバックを先に伝えてから、改善点に触れるとバランスが取れます。

面談の質を高めるために

5つのテクニックとNGパターンを紹介しましたが、最も大切なのは「テクニックを使う」ことではなく、「部下に対する本当の関心を持つ」ことです。

テクニックは手段にすぎません。「この質問をすればやる気が出るだろう」と計算して使っても、その意図は部下に見透かされます。「この人のことを本当に理解したい」「この人に成長してほしい」という本気の思いが土台にあって初めて、テクニックが効果を発揮します。

また、面談の効果は1回で現れるものではありません。毎回の面談で少しずつ信頼を積み重ね、「この人になら本音を話しても大丈夫だ」と部下が感じるようになったとき、面談は真の力を発揮します。

面談に慣れていない方は、まず5つのテクニックの中から1つだけ選んで、次の面談で試してみてください。一つの質問が、部下の表情を変える瞬間を体験できるはずです。

まとめ

面談で部下のやる気を引き出す5つの質問テクニックを改めて整理します。

テクニック代表的な質問満たす欲求
ポジティブフォーカス「一番やりがいを感じた瞬間は?」有能感
制約解除「制約がなかったら、どうしたい?」自律性
感情の言語化「何が引っかかっている?」関係性
強みの承認「あなたの強みは○○、どう思う?」有能感
未来志向「半年後、どうなっていたい?」自律性

そして、避けるべき3つのNGパターン。

  1. 尋問型——質問を浴びせず、沈黙を待つ
  2. 自分語り型——発話比率を「部下7:上司3」に
  3. 評価通告型——ダメ出しではなく、SBIフレームワークで

面談は、部下のやる気を引き出す最も身近で最も強力なツールです。テクニックを磨きつつも、その根底にある「相手への真剣な関心」を忘れずに。次の1on1から、一つだけ新しい質問を試してみてください。


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