管理職が有給を取らないチームは、部下も休めなくなる|「背中で示す」の副作用
部下6名を持つ課長が、今年度まだ有給を1日も使っていない。部下には「遠慮せず取っていい」と伝えてきたし、申請を断ったこともない。それでもチームの取得率は、他部署より低いままだった。人事から下期の調整を求められて残日数を開いたとき、原因は部下の遠慮ではないことに行き当たった。
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有給が取られない原因は、部下の遠慮ではありません。休むための段取りが、毎回ゼロから始まることです。
10月の中旬。人事から「有給の取得状況を下期で調整してください」という一斉メールが届きます。自分の残日数を開くと、今年度はまだ1日も使っていない。部下の分を見ると、こちらも似た数字が並んでいます。
休むなと言った覚えはありません。「遠慮せず取っていい」と伝えてきたはずです。それでも取られていない。自分が言っていることと、していることが違う。部下に見えているのは、そこです。
ただ、上司が有給を取れば終わる話でもありません。取られない理由は、もう少し手前にあります。
この記事の目次4セクション · 約5分▶
休むための段取りが、毎回ゼロから始まっている
誰かが1日休むには、3つが決まっていなければなりません。その日の連絡先、判断を代わる人、引き継ぐ範囲です。
上司が一度も休んでいないチームでは、この3つが決まっていません。決める機会がなかったからです。すると部下が休もうとしたとき、全部を自分でやることになります。誰に振るかを考え、この案件は自分がいないと止まるのかを判断し、関係者に個別に連絡する。
作業そのものは、たいした量ではないかもしれません。効いてくるのは、毎回それを一から考えることと、人に頼むときに気を使うことです。1日休むためにそこまでするのかと考えて、多くの人は休まない方を選びます。取得率が上がらないのは、たいていここです。
そして上司が休むと、この3つが一度決まります。上司はチームで一番判断の量が多い人です。その上司が抜けても回る形が一度できれば、部下が抜けても回ります。逆の順番では動きません。部下から取らせようとしても決まった形がないため、一人ひとりが毎回同じことを考え直すことになります。
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申請への第一声が、次の申請を止めている
段取りが決まっていても、申請が出てこないことがあります。出したときの第一声が原因です。
- 「大丈夫? その日、誰が対応する?」→ 調整が済んでいない申請は出せない、と思うようになります
- 「何かあった?」→ 理由を用意しないと出せない、と思うようになります
- 「うーん、その日か……」→ 断られたわけではないので言い返せず、次から出しません
どれも断ってはいません。それでも、受け取る側には断られたのと同じに聞こえます。
言い換えは1つだけです。まず「了解しました、共有しておきます」で終える。 日程を動かしてほしい場合も、承認を先に出して、調整の相談は後にします。先に承認しておけば、調整は上司と一緒にやる作業になります。逆だと、部下が一人で片付けてから出す宿題になります。
ただし、第一声を直しても、すでに引っ込めた分は戻ってきません。一度出すのをやめた人は、上司からは「あまり取らない人」に見えるだけで、取りたかったことは伝わらないからです。取得率を見ても「取らなかった」までは分かりますが、「取りたかった」は出てきません。
ここは上司が待っていても拾えません。同僚でも、社外の窓口でもかまいません。その希望が一度どこかで言葉になっていれば、次の機会には出てきます。
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管理職が先に取るときの3つの条件
自分が先に取るとしても、取り方によって伝わるものが変わります。
1. 閑散期ではなく、普通の週に取る
閑散期に取ると、余裕があるときなら休んでいい、と伝わります。部下が休みたいのは、たいてい余裕がないときです。普通の週の1日が、閑散期の3日より効きます。
2. 理由を言わずに取る
「子どもの行事で」「通院で」と説明すると、部下も理由を用意してから出すようになります。「私用で1日いただきます」で止めます。上司が理由を言わない状態を作って、はじめて部下も言わずに出せます。
3. 不在中の連絡ルールを、休む前に1行残す
「緊急のものはAさんへ。それ以外は戻ってから対応します」を書いて共有します。これがないと、休みながら半分働くことになります。休暇中の上司から返信が来るのを見た部下は、休んでも結局対応するのだと受け取ります。
この3つを1回やると、1つ目のセクションで挙げた3点——連絡先、判断を代わる人、引き継ぐ範囲——が決まります。次に部下が休むとき、考え直さずに済みます。
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まとめ
有給が取られない原因は、部下の遠慮ではなく次の2つです。
- 休むための段取りが決まっておらず、休むこと自体が毎回ひと仕事になる
- 申請への第一声が審査になっていて、次の申請が出てこない
どちらも取得率の数字には出てきません。そして、どちらも上司の側から始められます。普通の週に1日取る。理由は言わない。不在中の連絡ルールを1行残す。この1回で段取りが決まり、部下が使える形になります。
「背中で示す」は、働く姿だけでなく休む姿にも効きます。示す背中を間違えると、同じ熱心さがそのまま逆向きに働きます。
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