2026年9月15日by O2 CONNECTIVE編集部9分で読めます

「うちの若手は主体性がない」と嘆く前に確認すべき3つの仕組み|性格ではなく設計の問題

指示したことはやる。それ以上はやらない。会議で意見を求めても「特にありません」。研修も入れた、声かけも増やした、それでも変わらない。ある会社で、若手ではなく仕組みのほうを一つずつ点検してみたところ、主体性を発揮した瞬間に損をする経路が、社内に三本も通っていた。

「うちの若手は主体性がない」と嘆く前に確認すべき3つの仕組み|性格ではなく設計の問題

主体性は、性格ではなく割に合うかどうかで決まります。

「指示したことはやる。でも、それ以上はやらない」。この評価を若手に対して下している管理職は、決して少数派ではありません。研修を入れ、声かけを増やし、それでも変わらないとき、たいていは「今どきの子は」で結論が出ます。

ただ、同じ会社の別の部署では若手が普通に提案してくることがあります。同じ世代を採用しているのに差が出るなら、世代の話ではありません。

主体性は「あるかないか」ではなく「出すと得か損か」で決まる

主体的に動くというのは、指示されていない範囲に踏み出すということです。踏み出すと、必ず次のどれかが起きます。

うまくいって評価される。うまくいかずに責任を問われる。うまくいったが誰にも気づかれない。あるいは、うまくいったせいで仕事が増える。

このうち、報われるのは最初の一つだけです。残り三つはすべて、次に踏み出す動機を削ります。そして多くの職場では、後ろの三つのほうが起こりやすい設計になっています。

若手はこれを、入社して数ヶ月で学習します。誰かに教わるわけではなく、先輩が提案して潰されるところや、余計な仕事を引き受けた人が翌月さらに忙しくなるところを見て、自然に覚えます。

つまり「主体性がない」と見えている状態の多くは、主体性を出した結果を観測したうえでの合理的な判断です。ここを性格の問題として扱うかぎり、何をやっても戻りません。

確認すべきなのは、若手の内面ではなく、社内に通っている経路のほうです。

確認すべき3つの仕組み

仕組み1: 決められる範囲が明示されているか

「自分で考えて動いてほしい」と言いながら、どこまで自分で決めていいかを明示していない職場は、かなりあります。

範囲が示されていないと、踏み出す側は毎回賭けをすることになります。勝手にやったと言われるかもしれないし、なぜ相談しなかったと言われるかもしれない。この不確実性を避ける最短の方法が、全部確認してから動くという振る舞いです。これは外からは「指示待ち」に見えます。

点検の仕方は簡単です。若手に「いくらまでなら自分で決めていい?」「どこまでなら上に確認しなくていい?」と聞いてみる。即答できないなら、明示されていません。明示されていないものは、存在していないのと同じです。

金額でも、時間でも、対象範囲でもかまいません。線が引いてあること自体に意味があります。線があれば、その内側は安全地帯になり、安全地帯の中では人は動きます。

仕組み2: 失敗の扱いが、事前に決まっているか

「失敗してもいい」と言葉で伝えている職場は多い一方で、実際に失敗が起きたときの扱いが決まっている職場は多くありません。

決まっていないと、扱いはその時々の状況で変わります。忙しい時期なら強く言われ、余裕があれば流される。上司の機嫌にも左右される。この予測できなさが、挑戦のコストを跳ね上げます。

ここで見るべきは「叱るかどうか」ではありません。失敗の報告が、報告した本人にとって不利にならない経路になっているかです。報告した人が損をする構造になっていると、報告は遅れます。遅れれば傷は深くなり、深くなった結果を見て「だから任せられない」という判断が下される。この循環に入っている職場では、若手はまず動きません。

点検の仕方は、直近で起きた小さな失敗を思い出し、それが誰の口から、いつ、どういう経路で上に上がったかを辿ることです。本人以外の口から、時間が経ってから伝わっていたなら、経路が機能していません。

仕組み3: 増えた仕事が、どこかで清算されるか

見落とされやすいのがこれです。

主体的に動いた人は、たいてい仕事が増えます。提案が通れば実行担当になり、気づいて拾えば次からも拾う人になる。ここまでは自然な流れですが、問題は増えた分がどこにも記録されないことです。

評価の面談では成果が語られますが、日々の「拾った分」は数えられていない。担当表にも載らない。すると、動いた人ほど忙しくなり、動かなかった人と同じ評価を受けるという状態が生まれます。

この状態を一度でも目撃すると、若手は非常に速く学習します。しかも、この学習は覆りません。なぜなら、彼らの観測は正しいからです。

点検の仕方は、担当表に載っていない仕事を誰がやっているかを書き出すことです。特定の数人に偏っているなら、その人たちは今のところ善意で回してくれていますが、その善意には期限があります。

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「うちには当てはまらない」と思ったときの確かめ方

3つとも問題ないと感じた場合、確かめる方法があります。

直近半年で、若手から出た提案・意見・指摘を、思い出せるだけ挙げてみることです。

数が出てこないなら、出ていないのではなく、届いていない可能性があります。若手は上司にではなく、まず同期や年次の近い先輩に話します。そこで「まあ、言っても変わらないよ」と返されて止まる。この一次フィルタの存在は、上からはまず見えません。

もう一つ、挙げられた提案のうち採否の結果が本人に返っているものが何割かを数えてみてください。検討されたが通らなかった、という結果すら返っていない場合、本人からは「無視された」と区別がつきません。そして無視されたと解釈されたものは、二度目がありません。

仕組みを直す順番

三つ同時に手をつける必要はありません。効果が出る順番があります。

最初は仕組み1(決められる範囲の明示)です。 これは今日から着手でき、制度変更も予算も要りません。「この範囲は確認不要」と口頭で伝えるだけでも変わります。範囲が狭くてもかまいません。狭くても、明確なら動けます。

次が仕組み3(増えた分の可視化)です。 担当表に載っていない仕事を可視化するところまでで、まず十分です。評価に反映するかどうかは、その後の判断で構いません。見えていないものは扱えませんが、見えさえすれば扱い方は選べます。

最後が仕組み2(失敗の扱い)です。 これがいちばん時間がかかります。過去の経験によって作られた予測を書き換える作業なので、宣言では動きません。実際に失敗が起きたときの一回一回の対応が積み上がって、はじめて信用されます。

たとえば、若手が自分の判断で進めた案件でミスが出たとき。「なんで先に言わなかったの」 の代わりに、「わかった。で、今どうなってる?」 から入る。そのうえで「今回はこっちで持つ」と、その場の扱いだけ決めておく。先方への連絡を誰がいつ出すか、その場で決めるのはそこまでです。原因の追及は、火が消えてからで間に合います。

一回で信用されるわけではありません。ただ、この一回のあとでは、次に何かが起きたときに報告が届くまでの時間が変わります。若手が更新しているのは上司の言葉ではなく、実際にどう扱われたかの記録だからです。

この項目だけは、着手する日を自分で決められません。次に失敗が起きたときが、そのときです。

まとめ

若手に主体性がないように見えるとき、多くの場合、彼らは主体性を出した結果を観測したうえで判断しています。判断の材料になっているのは、決められる範囲が示されているか、失敗の扱いが予測できるか、増えた仕事が清算されるか、という三つの仕組みです。

これらはいずれも設計の問題であり、性格や世代の問題ではありません。設計の問題であるということは、変えられるということでもあります。

手をつける順番は、範囲の明示から。今日中に着手できて、若手の側から見て変化が分かる唯一の項目です。

よくある質問

Q. 決められる範囲を明示すると、勝手な判断が増えませんか?

A. 範囲を明示するとは、線の外側も同時に明確にすることです。実際には、線がないほうが判断のばらつきは大きくなります。狭い範囲から始めて、問題が起きなければ広げる進め方が安全です。

Q. 失敗を責めないようにしていますが、それでも報告が遅れます。

A. 責めていないつもりでも、報告した人が結果的に損をする経路が残っていることがあります。報告後に担当を外された、対応をすべて任された、といった扱いは、叱責がなくても同じ効果を持ちます。

Q. 拾ってくれた仕事を評価に反映する余地が、制度上ありません。

A. 評価に反映しなくても、可視化するだけで効果があります。「見られている」と「見られていない」の差は、報酬の有無より大きく働きます。まず担当表に載せるところからで構いません。

Q. 提案が出てこないのは、単に経験不足ではないでしょうか。

A. 経験不足であれば、提案の「質」が低いという形で現れます。数そのものがゼロに近い場合は、経験ではなく経路の問題である可能性が高いです。


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