10月の内定式で笑顔だった内定者が、入社前に気持ちが冷めていく|差を分けるのは、内定式ではなく"その後の沈黙"
採用担当の高橋は、内定式で内定者たちの笑顔を見て、今年は良い人材が取れたと安心していた。入社までの半年ほどの間、特に連絡することもないだろうと考えていた。そして半年後の入社式に並んでいたのは、確かに同じ顔だったが、10月に見たあの表情ではなかった。
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内定式の笑顔は、何も保証していない。
10月、内定式の会場は毎年同じような空気に包まれる。内定者は緊張しながらも笑顔で並び、代表者の挨拶にうなずき、儀式めいたやり取りをこなす。だが本当に見るべきなのは、この日の様子ではない。この日から入社までの間に、企業が何をしたか——あるいは、何もしなかったかである。
この記事の目次5セクション · 約5分▶
内定式の笑顔が意味しているもの
内定式で内定者が見せる笑顔は、入社の意思の強さを表しているわけではない。多くの場合それは、ここまでの選考に付き合ってくれた企業への礼儀であり、他の内定者と並んだ場での振る舞いにすぎない。
その場の空気に流されて笑うことと、半年後も入社する気持ちを保っていることは、別の話だ。採用担当がここで安心してしまうのは、笑顔という表面的なサインを、意思決定という内面の状態と取り違えているからである。
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決めているのは式ではなく、その後の"何もない期間"
内定式が10月、入社が4月という新卒採用の慣行では、多くの企業でその間に半年近い空白がある。この間、内定者に届くのは、事務的な提出書類の案内程度であることが多い。
内定者の気持ちを実際に決めているのは、内定式という一瞬のイベントではなく、この"何もない期間"に何を見聞きし、何を考えたかである。企業側は何もしていないつもりでも、内定者にとってはその沈黙自体が一つの情報になっている。
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沈黙のあいだに起きていること
この期間、内定者の周りでは静かにいくつかのことが進む。現職や在学中の環境から、引き留めや別の誘いを受けることがある。内定式のあとに別の会社から条件や仕事内容を聞けば、比較する材料も増える。同じように内定をもらった知人から、別の会社の話を聞くこともある。何より、内定式のときの高揚感が薄れ、日常の中で「本当にこれでよかったのか」と考える時間が増えていく。
企業から何も届かない間、内定者は会社の情報を自分で補うことになる。採用担当に聞けば済む小さな疑問も、連絡するほどではないと飲み込まれる。返信がない不安ではなく、確かめるきっかけがないまま判断を迫られることが、沈黙の重さを増していく。
企業からの連絡が何もなければ、この自問に答えを与えてくれる材料もない。不安や迷いは、放置されるほど確信に近づいていく。
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冷めさせないためにできること
内定式を盛大にすることよりも、その後の沈黙期間をどう扱うかの方が効果は大きい。
1つ目は、内定式の場で「この後、しばらく連絡が少ない時期がある」と先に伝えておくことだ。何も連絡がないことを"見捨てられた"と解釈させないための、最初の一手になる。
2つ目は、事務連絡以外の接点を、期間中に最低でも数回作ることだ。たとえば、配属予定の上司が担当業務の一日を紹介する、若手社員が入社後の仕事で戸惑ったことを話す、内定者がいま気になっていることを一つだけ聞く。会社の良い面だけを伝える場ではなく、入社後の景色を具体的に想像できる場にすることが大切である。ただし回数だけを増やしても効きにくい。同じ一言でも、結論から先に欲しい人と、経緯まで共有されたい人では受け取り方が違う。選考の過程でその人の考え方の傾向が見えていれば、限られた接点を「その人に届く形」で使える。回数より、届き方の方が効く。
3つ目は、内定者同士がつながれる機会を作ることだ。同期の存在を感じられれば、迷いを一人で抱え込む状況を避けられる。
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まとめ
内定式の笑顔は、入社への意思を保証するものではない。内定者の気持ちを実際に決めているのは、式のあとに続く"何もない期間"に、企業がどう関わったかである。
盛大な式より、その後の小さな接点の積み重ねの方が、入社前に気持ちが冷めていくのを防ぐ力を持っている。
よくある質問
Q. 内定者フォローは、どのくらいの頻度が適切ですか?
A. 回数を一律に決めるより、次の接点がいつ、何のためにあるかを先に伝えることが大切です。連絡がない期間を作る場合も、予定を共有しておけば沈黙を放置と受け取られにくくなります。
Q. 事務連絡以外では、何を話せばよいですか?
A. 入社後の仕事や配属先の雰囲気を具体的に知れる話題が向いています。担当者や先輩社員の仕事の話を聞いたり、内定者の疑問を一つ取り上げたりするだけでも、入社後を想像する材料になります。
Q. 連絡しすぎると、かえって負担になりませんか?
A. 連絡の回数より、内容と受け取り方への配慮が重要です。返信を求める連絡ばかりにせず、読むだけでよい情報や、都合のよいときに答えられる質問も組み合わせると負担を抑えられます。
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