「今年の目標、去年とほぼ同じですよね?」と言われた管理職の話
部下の目標シートを開いて、既視感に気づいた。去年とほぼ同じ文言。承認しようとした矢先、同僚にそれを指摘された管理職がいる。「去年と同じ」が繰り返される組織では、3つの停滞が静かに進行している。彼が変えたのは目標ではなく"問いかけ"だった。そして部下の言葉が変わり始めた。
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その一言を聞いたとき、彼は何も言い返せなかった。
4月の目標設定面談。部下がまとめてきた目標シートを確認し、「いいんじゃない」と承認しようとした矢先だった。隣の席の同僚マネージャーが、ふと彼の画面を覗き込んでこう言った。
——「それ、去年とほぼ同じですよね?」
なぜ目標は「去年と同じ」になるのか
正直に言えば、原因の大半はマネージャー側にある。
部下が「去年と同じ目標」を出してくるのは、手を抜いているからではない。「この組織で、何を目指せばいいのか分からない」というサインだ。
去年と同じ目標が生まれる構造は、だいたい3つに集約される。
1. マネージャー自身が「今年のチームの方向性」を言語化できていない
「売上を伸ばす」「品質を上げる」——こうした抽象的な方針しか伝えていないと、部下は去年の延長線上でしか目標を立てられない。方向性が曖昧なまま「自分で考えろ」と言われても、安全策として「去年と同じ」を選ぶのは合理的な判断だ。
2. 目標設定が「儀式」になっている
期初に目標を書き、期末に振り返る。その間、目標について話す機会はほとんどない。こうなると目標は「人事部に提出するもの」であり、「日々の仕事を導くもの」ではなくなる。部下にとって目標は、最も手間をかけたくない事務作業になる。
3. 「達成できそうな目標」を暗黙的に求めている
マネージャーが無意識に「達成率100%」を良しとする評価をしていると、部下は挑戦的な目標を避ける。去年達成できた目標をそのまま出すのが、最も安全な選択になる。
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停滞する目標が組織に与える3つのダメージ
「去年と同じ」が続く組織では、目に見えないところで3つのことが進行している。
ダメージ1:成長実感の喪失
人は「去年の自分より成長した」と感じられないとき、静かにやる気を失う。同じ目標を繰り返すということは、「あなたに期待していることは去年と変わりません」というメッセージになる。優秀な人ほど、このメッセージに敏感だ。
ダメージ2:1on1の形骸化
目標が具体的でなければ、1on1で話すことがなくなる。「最近どう?」「まあ、ぼちぼちです」——この会話が繰り返されるチームは、目標設定の時点ですでに躓いている。
ダメージ3:離職の「静かな予兆」
「成長機会がない」と感じる社員の多くは、目標設定の段階ですでに諦めている。退職理由として語られる「キャリアの不安」は、実は「今年も同じ目標を書いた瞬間」から始まっている。
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「コピペ目標」を脱却する3つの問いかけ
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では、どうすれば「去年と同じ」を抜け出せるのか。冒頭の管理職が翌年に実践した方法は、意外とシンプルだった。
問い1:「去年の目標で、一番つまらなかったものはどれ?」
いきなり「今年の目標は?」と聞くのではなく、去年を振り返る問いから始める。「つまらなかった」という表現がポイントだ。「達成できなかった」ではなく「つまらなかった」と聞くことで、部下は「やらされ感のあった仕事」を素直に話しやすくなる。
問い2:「もし制約がなかったら、今年やりたいことは?」
「制約がなかったら」というフレームを入れることで、部下は「現実的かどうか」のフィルターを一旦外せる。ここで出てくる答えに、その人が本当に挑戦したいことが隠れている。すべてを実現する必要はない。方向性のヒントを得ることが目的だ。
問い3:「半年後、何ができるようになっていたら嬉しい?」
目標を「数字」ではなく「状態」で語らせる問いだ。「売上120%」ではなく「新規顧客のアポを自分一人で取れるようになっていたい」。こう語れたとき、目標は初めて自分ごとになる。
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面談で使える具体的な質問テンプレート
上記の3つの問いを、実際の面談で使いやすい形にまとめた。
Step 1:振り返りの問い(5分)
- 「去年の目標で、一番手応えがあったのはどれ?」
- 「逆に、正直やらされ感があったものは?」
Step 2:理想の問い(10分)
- 「今年、もし何でもできるとしたら挑戦したいことは?」
- 「半年後、どんな自分になっていたら嬉しい?」
Step 3:接続の問い(10分)
- 「今話してくれたことと、チームの方針をどうつなげられそう?」
- 「その目標を達成するために、自分(マネージャー)にできることは?」
大切なのは、Step 3で「チームの方向性」と接続することだ。個人の「やりたいこと」と組織の「やるべきこと」が重なる部分を一緒に見つける。これが目標設定面談の本来の役割だ。
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まとめ:目標は「問い」から始まる
冒頭の管理職は、翌年の目標設定面談を変えた。目標シートの空欄を埋めさせる前に、まず3つの問いを投げかけた。
結果、チームの目標は「去年と同じ」ではなくなった。すべての目標が劇的に変わったわけではない。だが、部下が「自分で考えた目標」を持てるようになった。それだけで、1on1の質も、日々の仕事への向き合い方も変わっていった。
目標設定は、フォーマットを埋める作業ではない。部下への「問い」から始めることが、チームの停滞を打ち破る第一歩になる。
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